とある司書さんの一日…午前編

[R.W]とある司書さんの一日…午前編

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 はじめまして…だよな?この三千年にわたり収集した数千万冊の本や古文書を納める顕の国立図書館…その図書館の番人――つまり"司書"――をしているのがこの私、『栞』だ。
 ここで私は本の管理をしている。とは言っても本の貸し出しをする訳でもなく、本の整理と整頓をしているだけだ。それといっても、元々私が万人に対して一対一だったとしても上がってしまうのが根本的な原因だ。
 とは言っても本の貸し出しは行われている…それは、何たって我が誇りの万能化身であり記示生死の書の精霊である"索羅"のお陰である。
 索羅は本に対する万能化身であり、この本好きな私と正式契約した憑き精霊でもある。だから、この索羅によって毎日の本の貸し出しや書庫の清掃から挙げ句の果てに書の検索…召喚までをやってもらっている。
 だからと言っても私は仕事をしていない訳ではないので悪しからず…。

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 朝、私は司書室にて目を覚ました。これで15年間は図書館の敷地から出ていない。これは顕の国あっていらい初めてのことではないかと思い嬉しくなった。
 とりあえずは腹が減ったので朝食を作ろうと思い給湯室にで行く。ふと、この際はそんなに食べない料理でも作ろうと思い立ち、いつも傍らに置いている記示生死の書を指先でコツンと叩く。程なくしてスゥっと妖精じみていて羽の生えた30cmくらいの小人――"索羅"――が現れた。
「なんですか〜栞ぃ。昨日はまた新しい本が入ったので全てINDEXになおして気式に起こし直していてそんなに寝ていないのです。」
あぁ、ごめん…索羅。と、私は一言入れてから此処にある国から支給された食材で、これまで作っていない料理が作れないか訊ねた。
索羅は、「栞は料理のバリエーションが少ないからもぅ少し増やす意味でも頑張ると良いです。そうしないと男が振り向いてくれないですよ?」
と言いながら目を瞑って黙り込んだ。索羅はこの図書館の全ての本をINDEX化して頭に入れているだけではなく、その上で中身も全て覚えており中見検索もお手のモノである。索羅はこの食材から私の作ったことのない朝食を検索しているのだろう。まぁ、味が面白ければそれで良いと思う私なのでその癖を知る索羅の検索能力に頼っているのだが…。
そんなことを思っているうちに索羅が瞼を開けた。
「栞の好みに合いそうな本が25冊見つかりました。そのうちの一冊を私の独断で栞ぃにお勧めするです♪」
何やら嬉しそうな顔をする索羅の顔を見ながら私は索羅の召喚した本を五分で読破し、その索羅のお勧めする料理で朝を迎えることにした。

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 索羅の見つけた本は案の定、私の舌にも知識にもよい結果をもたらした様だったと朝食を終えて私は思った。
 横でちょこちょこ食べていた索羅は透き通る羽をパタパタさせながら妖精のように飛び上がった。
「栞の料理には索羅も満足でした。索羅は昨日の本を借りやすいように並べてデコレートしてくるです。栞ももぅそろそろ開館時間だからする事あるのなら早く済ました方が良いですよ。」
索羅はそう言うとそそくさと司書室から図書室に飛んでいった。そういえば…と時計を見上げると九時の開館時間まであと五分…とりあえず急いで五階――つまり"最上階"――の書庫室に行くことにした。
いつもするように私はいくつもの梯子をぐんぐんと上っていった。長い長い梯子の旅だ。務め始めた頃にはキツかった梯子だったが今では軽く登れる――伊達に15年も図書館にいませんよ――するすると登っていくとあっと言う間に最上階に着いた。最上階の一角はテラスになっており、そこで食料の足しとして家庭菜園をしているのだ。毎年毎年地力が衰えない様に肥料を与えたり植えるモノをローテーションしたり…はじめの頃は二、三種類しか栽培できなかった私だが、今では数十種類の野菜を栽培いている。今年の実り具合も良さそうだ。私は毎日しているように菜園室に流れる水を汲み土にたっぷりと水を含ませる。そして、いつものように野菜の健康状態を観るべく観察を始めた。
 一通りの観察が終わり、私は何も異常がないのに安堵する。
そして、私はいつもの日課としての図書の整理を始めた。
 ふと、下を見下ろすとそれなりに図書室は賑わっていることが分かる。眼鏡をかけている私なのだが、この眼鏡は索羅の特別製で、普通の眼鏡の機能に加えてこの図書館内ならどこまでも見えるという補助機能付きだ。その為、私は図書館にいる全ての人の顔や今何をしているかについても手に取る様に分かるのだ。
 そして私は最上階に誰も上がってこないの観て、そして書庫の整理を始めた。
 この図書館は本の古さが古ければ古いほど上へ上へと追いやられていく形になっており、その為、古文書などは最上階の古文室に納められている。私は司書の証であるマスターキーで古文室に入った。古文室は近々別途に作る地下室に移行される計画がなされておりまた面倒である。私は司書と仕事として以外の仕事が一つある。それは、古文書――今現在はTow=Zexia…つまり"顕の国の初代王"…の日記――の解読だ。 いつもの様に古文書の一束をめくりノートに書き写す…そうして150枚程写し終わった頃に私の腹は空腹だと訴えた。私はそうだなと思い、下の階に降りる。昼食も司書室で食べる予定なので誰も図書室一階を歩く私を観て居ないことを確認して索羅と合流し、料理に取りかかる。今日の昼食はいつもの内容のを少し変えたモノだったがとてもよくできていた。

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こんにちはです。繻那です。
今回の『[R.W]とある司書さんの一日…午前編』はその名通り栞と索羅の午前中です。とりあえず次回――つまり午後編――を晨にでもUPしますので宜しくな訳で繻那でした。
>>繻<<

P.S.
誤字・脱字…文章の捻れなどがありましたらコメントなどで繻那にお知らせしていただけるなら幸いです。