ジュの字と何処ぞの武闘大会 15

......前回の続き......
珠と呪、繻とリムは各々の次の相手を知り次の戦いに備えるのであった…
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「第二回戦は珠・呪VSロスト=ジョーカー・クレイジー=カラーだぁぁぁぁ!!」
此処は大会の行われる闘技場…今珠と呪はついに第二回戦に出場したのだった。
「うわー一回戦に増して観客数増えていませんか?呪さん。」
「あァ、多分…二割増くらいはしてんじゃねェカ?」
「で、今回、問題なのは暗姫さんですが…対策考えていますか?呪さん。」
「まァ、大体ナ。最悪の場合お前の奥底を使うかもしれないがナ。あト、お前の最強状態は使っても良いからナ?」
「了解。やってやれ!!ですね!」
珠と呪に向かって対峙しているロスト=ジョーカーのこと暗姫が声を掛けてきた。
「こんにちわー暗姫ちゃんよー♪珠も頑張りなよー。今回は私の狂彩使うから手加減できないからねーww♪」
珠たちと10m以上離れているというのに暗姫は声を張り上げて話しかけていた。
「あー暗姫さん元気良すぎますね。何か良いことでもあったのかなー。」
「ヲイ。そこよりも『狂彩』に注意だナ。あの横にいるマントの奴だろうガ、秘密兵器であることにはかわりなさそうだゼ。」
珠と呪は『狂彩』に注目した。確かに暗姫の横には白いフード付きのマントの人が居る。そして、それと同時にかなりの邪属域の気を発散していた。
「とりあえずヤバいですね…呪さんはどっちと戦いますか?」
「とりあえずハ…そんなに手合わせしたことのない暗姫さんとやらと戦っテ、珠があのアンノウンな狂彩の相手をしロ。負けるなら最強状態で挑めヨ?」
「…了解です。呪さん。まぁ、出来るだけ頑張ってきます。」
珠と呪が互いに頷いたそのとき、司会者の声が二人の耳に届いた。
「たぁーいせん者ー諸君。バトルぜぇぇ!!れでぃー・ふぁいとぉぉぉ!!!!!」

そして広々とした闘技場にゴングが鳴り響いた。
それと同時に珠と呪は戦闘態勢に入るが、相手の一人が急接近してきた。そして呪の目の前に飛び込んできたのは――狂彩だった。
 慌てて珠が呪を援護しようとコマンドウインドを開く。
『戦う』→『リフレクター』
珠の表面に薄い対物理攻撃用の障壁が生成され、珠は更にコマンドウインドを開いた。
『戦う』→『電光石火』
珠は一瞬で呪の前まで移動して『狂彩』に体当たりした。
『狂彩』は珠により数mぶっとび尻餅を付いた。その拍子にマントのフードがずれて素顔が見えた。
「あ…あの人は…。」
珠が声を漏らした。
「確かニ…そういう訳カ…そうすれば二人になるわナ」
呪も謎が全て解けた顔をした。
「つまり…呪さん、さっさと暗姫さん倒して下さいよ。」
珠がとりあえずといった感じで呪に言った。
狂彩は鋭利な刃物の様な目線を二人に向けた。
「でも…やっぱり僕の勝ち目は無いみたい…。」
『狂彩』の鋭利な目線を受けて珠は少し怯えた。
「珠ァ!!お前の一番得意な獲物を使エ!!」
珠の様子を見た呪がすかさず何かを珠に投げてよこした。
「でも…これは…」
受け取った珠の表情が曇る…
「あァ、後の戦いに残しておきたかったのは解るが、今のお前はソレか裏を使わないと勝てねぇヨ…だからこそ…ソレを使エ…珠ぁぁァ!!!!」
呪が珠を一喝した。
「了解…久々にコレで腕を振るうことになるのか…珠、行きます!!」
その獲物を掴んで珠は『狂彩』に挑もうとしたその時…。
暗姫が急に笑いだした。
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
珠が動きを止め暗姫を見る。
「珠ぁ、そんな武器で狂彩を倒す気ぃ?いや、倒せると思うの?くくく…何処の冗談よ…だって…既にその獲物は『武器』ですら無いでしょ?…クククク…張扇[ハリセン]なんてモノで狂彩にダメージ与えられるつもり?」
そう、珠の手に握られた獲物は普通コントで使われるモノより一回り程大きなハリセンだったのだ。
「クククク…珠もせいぜい頑張りなよ…。」
暗姫の勝機を確信した台詞をきっかけに狂彩が珠に襲いかかった。
「き…来た!!」
珠は改めてハリセンを構え直した。
狂彩は右腕で斬りつけた。珠はそれをハリセンで受け止めるがハリセンには傷一つ付かない。
「…!?」
『狂彩』の鋭利な視線が更に鋭くなった。すると『狂彩』はマントの下から二つの剣を引き出し、珠に向けた。
「お前は『想い』の色は何色か判るか?」
 珠は訳が分からないというような表情を浮かべつつ『狂彩』と間合いを離した。
「どういう意味です…か?」
 その珠の返答がおかしかったのか『狂彩』はふふんと鼻で笑ってからこう言った。
「だからさー、お前は想いの色は何色だと思う?」
途端に『狂彩』の剣がほのかに紅く輝いた。
「え…?」
「そうー…人の『想い』ってのはな…何に対しても勝る『怨念』並の力なんだよぉ。だーかーー…」
『狂彩』の持つ二つの剣が更に紅くなり…
「ら!!」
そう発して『狂彩』は剣を…血の様に紅い殺刃を振るった。
その斬撃は珠のハリセンを掠り観客席へと飛んでいった。
『わぁぁぁぁぁぁ』
観客席から悲鳴が聞こえた気がしたが珠はこの際聞こえないふりをした…何せ…初めて…ハリセンに…傷が…付いてしまったのだから…。
「呪さ〜ん、ヤヴァいですからそちらは早く終わらせて下さい〜orz…てか早くしないと死にそ〜です…OTL」
珠は呪に無き顔で言った。
「ちょっと待テ、こっちはコッチデ悪戦苦闘中だかラ期待はするな…」
呪が忙しそうに大剣を振るいながら答えた。確かに先程から「ガシン」とか「キン」とか物々しい音が鳴っていたなと珠は回想する…が『狂彩』も休む気は無いらしく追撃を繰り出してきた。
「って、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
珠は涙目でハリセンを通常時の五倍まで強化してそれを受け止める。時折「ミシ…」やら「ビシ…」などと音が鳴るのは両者の気が攻防により相殺して消耗している証拠であり、元々そこまで気の量が多くない珠としては辛いものがあった。
「ちょ、ちょっとまたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
珠は『狂彩』の八撃目の斬撃を回避し、一気に間合いを開いた。そして…額当てを引きちぎり…
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!!これでも喰らえ!!!!!!!!!!」
と投げた。
「!?」
案の定、『狂彩』はそれに切りつけて…自爆した。
ちゅどん…確かにそんな音をさせながら『狂彩』は斜め45゜に回転しながら吹き飛んだ。珠はそれにコマンドウインドを開き追撃に入る。
『奥義』→『雷鳴剣』
珠は片手に持っている電撃を帯びたハリセンで勢いよく、吹っ飛んでいる『狂彩』に斬り付けた。
『狂彩』は更にに吹っ飛び場外へ…落ちなかった。
「やるじゃねぇか…」
『狂彩』は場外に落ちる刹那、片方の剣を振るい、その斬撃の反動で場外に出てしまうのを回避したのだった。
「え!?そんなの可能なの!?」
珠が驚いた顔をしている。
「当たり前だ。この剣は故人の物だからな…それだけ唯一の物は存在価値があるんだよぉ…」
珠はどうでもいい顔をしながらコマンドウインドを開く。
『戦う』→『波動砲
珠の目の前に巨大な輪が出現、間に何らかの力が溜まっていくのが見える…

その頃、呪は…
「く…『狂彩』…ダメージを喰らったみたいね…やっぱキツいわ。」
暗姫は呪の大剣での攻撃を苦無[クナイ]で受け止めながらそう思った。
「暗姫とやラ、先程と比べテ、手が鈍ってきているガ、どうかしたのカ?」
最近の戦いに喜びの色を隠せないでいる呪が暗姫に言った。
「何よ…アンタ、判って言っているでしょ?私と『狂彩』の関係。」
「当たり前だろガ、俺は違法者処刑人だゼ?過去から現在への犯罪者くらい網羅しているサ。」
 この時、呪は初めて暗姫を直視した。
「でもね…私にはやらなきゃならない事があるのよ!!」

暗姫は力を溜めると右手から何かを放った。
すかさず呪は反応して受け流す。
「ン…千本カ…。」
それを受け流されたのを見て、暗姫はすかさずまた何かを呪に投擲した。
それも呪は軽くいなす。
「ン…今度は苦無だト…?」
更に暗姫は投擲する。
「ナ…!!ナイフかヨッ!!」
どんどん大きな武器が飛び出し焦る呪だが、とりあえず避けておく。
暗姫はまだまだと間髪付けずに投擲した。
「うゲ…今度は槍かヨ!!」
そう言いつつ呪は避けるが次のがまた迫ってくる。
「うわぁぁぁぁァァァ!!何てモン投げるんダ。この女!!」
呪はそんな事を言いつつ暗姫の投擲してきた大剣をかわした。
「ヴ…今度は何を投ゲ……!!」
呪の目には大きな大きな岩の様なものを担いだ暗姫が映った。
「一人目終わりー!!!!」
そのどでかい岩が呪に振り降ろされる刹那…呪は目を疑った。
「ナ…何でだ…何で光の塊がこっちに飛んデ…」
そぅ、光の塊が猛スピードで暗姫にぶつかったのだった。
「ふぅ、間一髪ですね。呪さん。」
狂彩と戦っていた筈の珠が呪の方に駆けて来た。
それと同時に暗姫は場外に落ちた。
「珠…お前…狂彩ハ…どうシタ?」
呪が息を荒げつつ珠に聞く。珠はさらりと答えた。
「暗姫さんの気が著しく消耗したので現在は実体化出来ない模様ですよ。」
「アリガトナ…。」
呪がそう言ったときに対戦終了のゴングが鳴った。
「勝者はーーーー!!!!!! 呪と珠だぁーーーー!!!!!!!!」
そしてこの会場一杯に歓声が巻き起こった。
『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!』
会場一杯の歓声を受けながら珠と呪は歩きながら、暗姫はタンカに担がれて退場した。

その頃の繻――
「繻さん…珠さんと呪さんは勝てますでしょうか…心配です。」
薄い緑色の髪を持った虚構体…リムが繻に言った。
「大丈夫…あの人達は負けないわよ。何せ実力じゃ並だけど、一番変速的で一番適応力の高いコンビだもの。」
紫の髪を持つメイド…繻がクスリと笑いながら答えた。
「そうですね。勝って…走って報告しに来てくれますよね。」
リムも繻につられてクスリと笑った。
「さて、いつまでもベッドで休んでいても意味はないわね。もぅ90%は回復したし大丈夫。…さて、リム。第二回戦に行きますか。」
そう言いながら繻はベッドから降りた。
「はい♪」
リムも嬉しそうにドレスを揺らした。

するとドタドタと廊下を走る音が聞こえてくる。
「繻さ〜ん!!リムさ〜ん!!」
次いで珠の快活な声が聞こえてきた。
「ふふw。やっぱり勝ち上がったわねw。」
「ですねw」
病室で二人のメイドの小さな笑い声が微かに響いた…。

=とぅ〜び〜こんてにゅ〜!!=