神々の戦い…厄災神の場合

 厄神…それは憑かれた者に厄を振りまく神の事である。



 今、D.Wにて厄神と呼ばれる存在は…R.Wの天神(空神)を倒すためにとある平原に来ていた。
「はぁ…天の神を倒さなくてはならないとか…毎度のことついてないというか…まぁボクの能力は天神であっても仕留める事の出来る『厄なる闇』なんだけどさ…はぁ…。」
 本人の運自体悪い模様…。
「で…天神さ〜ん…居ないのですか〜?居ないのならばこの社[やしろ]、壊しちゃいますけれど〜?」
 そう、今厄神が居るのは天神を奉ってある社の前である。
「はぁ…天神さんはお留守ですか…あ〜うちの(自称)魔王様に怒られる…orz」
 そんなやる気の無い白髪少年がおろおろしていると…どんどん雲がかげって…
「あ…待ちに待った天神さんかな…。」
 厄神が顔を上げたが…。
「ぎゃっ!!」
 光を右目に射られた。痛みを堪えながら厄神は次の行動へ素早く転じる。
「だ、誰ですか!?」
 彼は転がりながら追撃を避けつつ光が飛んできた空の方向を観た。
「二人…って誰!?」
 厄神は緊張感の伴わない言葉を吐きつつ攻撃へと転じる。
「我に仇為した事を後悔せよ!!」
 厄神がいつもの決まり文句を口にすると、草原中の草の影から黒い触手の様なものが一斉に詳細不明の二人へと襲いかかった…のだが…。
「え!?…ナニコレ…」
 全ての触手の様なものは鋭い光によって打ち抜かれ、大きな光によって凪ぎ払われた。
「これって…えっ!?…ちょっと…知らないよ…R.Wにこんな神が居るなんて知らないよ…。」
 そんな戦闘意欲の失った彼の前に光の矢が…
「ひぃっ!!」
 厄神のすぐ側に落ちた。
「(いや…考えるんだ…このR.Wで警戒すべき属性神は八人、『火』『水』『金』『木』『雷』『風』『地(土)』『天(空)』…そのうち飛行を可能とするのは『火』『水』『雷』『風』『天(空)』…そのうち今の攻撃を再現できるのは『雷』…。矢…ということは『風』も関連していそうだ…多分この二人か…ならば…!!)」
 厄神は両腕に装備していた輪を二人へと投げた。
「我が闇に仇為す光を吸え!!」
 その文句が聞こえたのか、二人は各々の武器にて受け止めた。
「BINGO!!…やはり貴方たちでしたか…。」
 輪を受け止めた二人は風神と雷神だった。
「ありゃ…バレてしまったみたいだね…トルさんや。」
 金髪の少年が笑いながら言った。それに合わせて不思議な髪型の女が答える。
「アクスさんこそ…。」

これは余裕の笑みと言うものか…風神と雷神は厄神を見下しながら『ハハハ』と笑った…。
「はいはい…お二人さん、仲の良いことは良いのですが…とりあえず貴方たちが天神さんの代理ということでいいですか?」
右目から流れていた血が止まったらしい厄神は両手を血で濡らしながら二人を睨んだ。

「わかった…遺言はそれで良いのだな?我が敵の厄神とやら。」
そう言いつつ雷神の瞳は不適に輝いた。
「そぅ。天の炎であるこの小さき雷神アクス=ガイナと、天の水である気高き風神のことトル=システルが空神のロウさんの代理だよ。」
当たり前だと言うように呆れた顔をしながら風神が言った。
「あーやっぱりか…此処の人も厄を見下すか…身分を弁えて欲しいよ…はぁ…」
厄神は先程貫かれ使いものにならなくなった眼に…

…指を入れた。

ズブ…

…ズブブ…

少し眼漿を垂らしながら指を食い込ましていく…。

「うわぁ…なんだ…コイツは…」
「遂に狂ったのか?」
二人の神は思い思いのことを呟きつつ……気味が悪いと厄神を見つめた。

「ふふふ…」

壊れた…

決壊した…

周囲の空気が急に重くなったかの様に二人の動きが止まる…

そして…完全なる闇が周囲数kmを埋めた。

「だからさぁ…みんな僕が怖いんじゃないかなぁ…くくく…あはははははははははははは!!!!」
厄神は血の涙を流しながら笑い続け…そして…

…闇は静けさを取り戻した。





少し前…木神の社では…。

「はぁはぁはぁ…私を本気にさせるからいけないのよ……だからアンタは…消し炭になるのよぉ…。」
敵であり命を以て主を護った晨を消し炭にした後…その炭に抱きついて泣き崩れていた…が。何かを感じたようにあたりを見回す。

「闇…うわぁ…これはマズいわね…どうする?私!!」

炎神は炭と二人の神のどっちを取るか思い悩んだ後まずは助けに行くことにしたらしく炎の翼を作り出して空に飛び出した。




そして闇は音もなく異界への門へと動いていた。

闇は二人の神を内包した儘音もなく動いていく…

その前に大きな壁が立ちふさがった。

「…どいてくれないかなぁ…邪魔なんだけど…あ、でも通ろうとしたら通れるけれど…呑んじゃうよ?その水。」

そう、立ちふさがるは水の壁、その下には一人の少女…水神が待っていた。
「アンタ…悪よね?うちの子たちを無断で連れてかないでくれる?」
そう言いつつ水神は闇の中の厄神を睨む。
「酷いなあ…最初に攻撃してきたのはそっちなのに…」
厄神は困った顔をした。
「どっちにしろ悪である貴方には死ぬか尻尾を巻いて逃げて貰うけれどね…フフフ…闇だからといって強がるんじゃないわよ?」
水神はそう言いながら壁を…トン…と叩いた。
「!!」
途端に水が…闇を襲う。
「貴方は厄であって闇じゃないのよ。唯の闇を使える厄災神でしかないの…分かるかしら?…だから私も勝てるんだもの。」
闇に潜り込んだ水は中から雷神と風神を引きずり出した。
「まぁ…今回は二人助けられただけで善としましょうか。前みたいに仲間を失うのは嫌だからね…。」
水神の顔に少し暗い陰が落ちる。しかし何か感じたのかすぐぱっと明るい顔になった。
「真打ちも登場するみたいだしね…悪は正義に負けるから悪なんだしね!!」
その台詞を聞いた厄神の顔が初めて強ばった。
「まさか…!!」
そしてその後ろで声がした。
「当たり前でしょう?厄神。全ての属性の中で最も強いのが誰か…前もって教えられている筈よ?あの魔王様に…。」
そう…その後ろに居たのは…。
「おまえは…」
厄神が全てを語る前にそれが叫び声に変わった。

何故なら…炎の腕により右腕を掴まれ…一気に炭化させられたのだから…。
「あああああぁぁぁ――!!!!」
痛みの渦に翻弄されながら厄神は闇界で一人に一つ持たされたR.Wで使うことの出来る輪具を展開した。
「…この恨みは…いつか…はらしてやる…から…な…」
そう言って厄神は…右目と右腕を失った厄神は…R.Wから姿を消した…。


=-=-=-=-=-=-=-キリトリ=-=-=-=-=-=-=-
というわけで今回は全然活躍できていない風神であるトルです。
今回は厄神による神たちの攻防戦の話ですね。
しかし、私たち風神と雷神は戦術上、『神による最高の武器』である『神具』による戦いを得意としていたのが敗因となってしまいました。
結果的にウォル(水神)さんとユト(炎神)さんの補助やトドメがあったからこそ助かりましたが…なんかコレってヤヴァいな…orz

まぁそんな戦いでしたが今回の教訓は「勝ったものが後の正義」でしょうか…。どんなに強くても他に居る強いものに負ければ悪とされるのです。
絶対的な力により穏便に守護するのが本当の正義かと思いますけれど…でも負けた身でこんなこと言って…説得力無いですよね…。
そんな訳で風神トルによる解説でした…orz